研究分担者 |
桑原 義博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (90281196)
大野 正夫 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (00251413)
西 弘嗣 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20192685)
酒井 英男 富山大学, 理学部, 教授 (30134993)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
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研究概要 |
カトマンズの3地点でコアボーリングを実施し,総計125mのコアを採取することができた.そのうち1本は湖成堆積物の基底に達するもので,もう1本は,これまでに得ることのできていなかった完新世のコアである.これらのコアの堆積学的記載およびサンプリングを行い,各分野の研究分担者に試料を配付した.また夏期に京都大学地球熱学研究施設において,2日間の研究集会を開催すると同時に,IGCP-476の第1回シンポジウム(東京)や日中共同の国際ワークショップ(金沢)などにおいて,これまでの研究成果を発表した. カトマンズ盆地西寄りのRabibhawanから得られた全長218mのコアについて,10cmあるいは1m毎に花粉,珪藻,粘土,粒度分布および有機物・無機物の化学組成分析を行った.その結果,過去70万年の本地域の古気候・古植生の変動および古カトマンズ湖の堆積環境変遷史を明らかにすることができた.その中で特筆すべきことは,主に花粉組成と炭素同位体分析で得られた変化曲線に,古地磁気層序に基づく年代の目盛りを入れた結果,海成堆積物から得られている酸素同位体のステージ(MIS>の2から17に対応していることが明らかになったことである.また,絶対花粉数や全炭素量および炭素/窒素比もそれに従い変動しており,温暖期にはそれらの値が高くなることが判明した.珪藻の組成分析,浮遊性/底生比率,河川・湿地指標種の比率をもとに,古カトマンズ湖の湖水位変動の概略を得ると同時に,富栄養化の時期を特定することができた.さらに,約40万年前のMIS11を境に,花粉全個体数や珪藻の全個体数が激減することが明らかとなった.これらの成果は,インドモンスーン地域の陸上から得られた世界初のデータである. Rabibhawanのコア最上部45mについては,AMS14C年代測定を行い,約4.5万年前までの年代の目盛りを入れることができた.その結果,約5万年を境に,それより上位では見かけの堆積速度が5倍になっていた.
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