研究分担者 |
西 弘嗣 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20192685)
大野 正夫 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (00251413)
桑原 義博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (90281196)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
酒井 英男 富山大学, 理学部, 教授 (30134993)
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研究概要 |
218mの最長連続コアにっき,1〜0.5m毎に化石花粉と珪藻の組成分析を行い,過去約75万年間の古植生と古気候の変動曲線および古カトマンズ湖の水位変動史の概要を得た.また粘土鉱物の組成分析とイライトの結晶化度を分析し,イライト/カオリナイト比とイライトの結晶化度が気候の乾湿変動の指標として有効であり,花粉分析から得られた乾湿変動によく対応していることを明らかにした.またコアの全岩有機分析を行い,過去75万年間のTOC,C/N比,δ13Cの変動曲線を得,それに基づきコアを14に分帯した.δ13C値が高く,陸上植物の寄与が低くC4植物の寄与が増加している寒冷乾燥な時期(氷河期)と,δ13C値が低く,TOC濃度とC/N比が高い温暖湿潤な時期(間氷期)とが交互していることが判明した.特にMIS11に相当する約40万年前は,花粉絶対量やTOCが多く,珪藻は固有種が独占的に増加しており,極めて湿潤であったことが分かった.南米コロンビアやフランス,ギリシヤの連続古気候記録との比較から,この時期にはハードレーセルが強化されたことが推定される.各種希土類およびアルカリ・アルカリ土類金属の無機分析の結果は,微化石,粘土や有機分析の変動ともよくリンクしていることが分かった. 最上部の深度10〜45m(約1.1〜4.5万年前)については,10cm毎(約100年に相当)に上記の各種分析を行っている他,山火事の頻度を明らかにし,乾湿変動を検証するために,多環式芳香族炭化水素類(PAHs)の分析を行った.その結果,TOC濃度とδ13Cが高い1.6〜3万年前にPAHsの値も高くなることが判明した.またカトマンズではLGM直後の約2.0〜1.9万年前から湿潤化が始まり,湖水位が上昇しており,北大西洋の気候変動より南極や南半球の高緯度地域とよく対応していることが分かった. 平成16年度にボーリングを行った4地点,総計約240mのコアについては,堆積物の詳細な観察・記載を行うと同時に,年代の目盛りを入れる目的で古地磁気(自然残留磁化と帯磁率)の測定を行っている.また上部のコアについては,AMS14C年代測定を行った.
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