研究概要 |
本研究は,32億年前の海底熱水系を保存良く記録する地層デキソンアイランド層である中の黒色チャートに注目し、これを詳細に観察・分析することにより,太古代の海洋底熱水噴出とそれに伴う堆積作用を復元することを目的とする。さらに本地層を構成する黒色チャート中に豊富に含まれる炭素物質は生物起源であると見なされ、それらの形態や化学・同位体的特徴から当時の海底熱水系周辺での生態系を復元することも可能である。 ピルバラ海岸グリーンストーン帯(coastal Pilbara Greenstone belt)中のデキソン島北岸にはデキソンアイランド層が連続的に分布する。地層は後の横ずれ変形のためにブロック状に数10度回転しており,それぞれのブロック(西からDX A〜DX F)で,地層層序が観察される。本年度注目した地層はDX B, DX Cについて行った. 本年は、試料準備期間として、機器の購入と立ち上げ、薄片作成による基礎記載を中心に行った。新しい機器により、電子顕微鏡観察の迅速化、顕微鏡観察からの物質分布のデジタル解析が可能になり、黒色チャート中の炭素の量比を定量的に求めることが可能になった。その結果、黒色チャート層には3種類、熱水起源と思われる黒色チャート脈には2種類のものがあり、それぞれ脈活動と海面表層での堆積作用に関連があることが明らかになった。 鏡下観察では、4サンプルでひも状バクテリア組織が確認された。エッチングによる電子顕微鏡観察では、現在の海洋底で報告されているマイクロバクテリアと同様の組織が大量にみつかった。ただこれに関しては、もう少し精度のよい実験の必要がある。炭素・酸素同位体では摂取サンプルのほとんどの分析が終わり、黒色チャート層と黒色チャート脈には差がほとんどなく、-25~-30パーミルであることが明らかになり、生物起源の可能性が高いことがわかった。
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