研究概要 |
本研究は,32億年前の海底熱水系を保存良く記録する地層デキソンアイランド層である中の黒色チャートに注目し、これを詳細に観察・分析することにより,太古代の海洋底熱水噴出とそれに伴う堆積作用を復元することを目的とする。さらに本地層を構成する黒色チャート中に豊富に含まれる炭素物質は生物起源であると見なされ,それらの形態や化学・同位体的特徴から当時の海底熱水系周辺での生態系を復元することも可能である。 本年はピルバラ海岸グリーンストーン帯(coastal Pilbara Greenstone belt)中のデキソン島北岸において黒色チャート層の集中的にサンプリングを行い、黒色チャートの側方変化について詳細に記載をおこなった。特に本年度注目した地層はDX E, DX Fについて行った。また、比較調査のために35億年前のマーブルバーチャートにて詳細な地質図を作成した。 室内作業では、連続地層の詳細な薄片作成・薄片観察を行ない、初期生物の痕跡を発見した。鏡下観察では、4サンプルでひも状バクテリア組織が確認された。また、熱水系脈の分類を行い、少なくとも3回の違う組成の熱水系が活動していたことがわかった。1)石英中心の細脈:ホストロックを変質させる。2)炭素質黒色脈:炭素濃度0.1%ほどの炭素物質を多く含む珪質脈:熱水脈直上の黒色チャートの起源。3)珪質黒色脈:炭素濃度が0.05%以下の炭素質物質が少ない珪質脈:黒色チャートを貫くがその上位の地層には影響を及ぼしていない。これらの関係は35億年前のMarble Bar Chertと類似することが明らかになった。 購入したデジタル解析装置により、岩石のデジタル解析が可能になり、黒色チャート層は3種類の岩石(塊状、ラミナ状黒色チャートと緑色頁岩)からなることが明らかになった。規則的な分析により黒色チャート中の炭素の量比を定量的に求めることが可能になった。DX B, DX Cについては炭素・酸素同位体では摂取サンプルのほとんどの分析が終わり、黒色チヤート層と黒色チャート脈には差がほとんどなく、-25~-30パーミルであることが明らかになり、生物起源の可能性が高いことがわかった。 秋、春の2回のミーテングを行い、現在GAS bulltineに論文を投稿中である。また、記載論文として、茨城大学紀要に2編のまとめを作成した。
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