研究課題
本年度の交付申請書に記したように、5月にメキシコ北部・エンゼナーダからアメリカ・シアトルにかけての太平洋東部(アメリカ大陸西岸)を約2週間にわたり車で移動しながら、貝形虫の標本採取調査を行った。具体的には潮間帯・潮下帯直下の海藻や堆積物を採取し、その中に含まれる貝形虫類の多様性を調査した。現在までに、Xestoleberis属とLoxoconcha属に関する同定をすすめ、その概要が明らかとなりつつある。まずアメリカ西海岸では日本に比べ種数が少ないことが挙げられる。メキシコからアメリカ北部までに顕著な生物地理的区分の異なる種グループは認められなかった。このことは南北に少なくとも3グループの分布する日本とは大きく異なる。特に日本列島周辺で本州北部、北海道から千島列島まで分布するが、アジアでは日本にしか産出しないXestoleberis属の種グループ(ここでは仮にX.sagamiensisグループと呼ぶ)が、アメリカの同緯度地域には産出しないことが確認された。この事実は、南(四国の黒潮流域に生息するX.ishizakii)から日本海(対馬暖流系のX.sagamiensis)、日本海北部(X.sp.A)、を経て北海道東部(親潮域のX.iturupica)にいたる分布域をもつ4種からなるX.sagamiensisグループが、日本海という縁海を種分化の場とし多様化し、北方進出をはたしたという申請者らの仮説を支持するデータのひとつと考えられる。また、小笠原諸島において、同様の潮間帯・潮下帯直下の海藻や堆積物調査を敢行し、貝形虫の同定をすすめている。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Hydobiologia (In press)
Palaeogeogr., Palaeoclimatol, Palaeoecol. (In press)
Zoologischer Anzeiger 243
ページ: 139-153
Paleontological Research 8・1
ページ: 11-28