研究概要 |
地殻深部の高温・高圧条件下で超臨界状態になったH_2Oを主とする流体と岩石の相互作用の例を求めた(従来の研究で採集した試料を含め,詳細に検鏡した)。 その結果,注目に値する事例として,「加水反応」した中国産の超高圧変成岩から次のような現象を確認した。藍晶石-緑簾石-フェンジャイト珪岩およびエクロジャイト(藍晶石-緑簾石-フェンジャイトを含む石英-ザクロ石-オンファス輝石岩)では,藍晶石と石英との間に斜長石の薄層が形成されているが,そのような薄層は異なる組成の斜長石よりなる二層構造になっている。またこれらの岩石にともなう石英脈では,斜長石の生成ばかりでなく,藍晶石がコランダムに部分的に置換されている。石英が多量に存在し,SiO_2に過飽和な岩石中にコランダムが出現することは,熱力学的には「非平衡」な現象であるが,このような現象は,昨年度のスリランカ産泥質グラニュライト(コンダライト)で初めて確認された石英の近傍における珪線石のコランダムによる置換と同様で,地質学的な時間スケールで高温・高圧の条件下におかれた岩石中での物理化学的な諸過程を理解する上で貴重である。特に超臨界流体は,造岩鉱物どうしの反応を促進し,熱や成分の移動を容易にして速やかに熱力学的平衡状態を達成する働きを持つと考えられてきたので,その実効的な作用を見積もる上で貴重である。 現時点で上記の観察事例に対する解釈は次の通りである:外部からの水に富む超臨界流体の流入により,共融系を構成する鉱物(特に,石英と長石などの異種鉱物)どうしの間で部分融解反応が進行した。ある程度の量のメルトが形成されると,メルト中のさまざまな成分,特にSiO_2に関して大きな濃度勾配が生じた。そのため,石英から比較的離れた側のメルトはSiO_2成分に不飽和になり,そのため,藍晶石や珪線石が分解してコランダムが生成した。 現在,この解釈を検証するため実験で再現しようとしている。またその際,石墨が存在することによる多様な効果も検証する。
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