研究概要 |
ゼオライトの触媒および分子ふるい機能を有効に活用するため、骨格構造および細孔内部を化学的に修飾した新しい物質の研究開発が盛んに行われている。本研究は、原子番号が隣り合う元素が共存する場合でも目的元素の構造情報を得ることができるX線異常散乱法をゼオライトの構造的研究に導入し、修飾元素の配列規則と細孔に挿入された有機分子との相互作用を解明することを主目的とする。 本年度は,昨年度に継続し,マンガン、コバルト、亜鉛を骨格構造に内包するゼオライトを作製し、単結晶構造解析を通じて、骨格に位置する有機分子と骨格構造の化学的修飾との関連性を研究展開した。たとえば、コバルトおよび亜鉛を含む系では、IM (imidazole)およびAEP(1,2-aminoethylpiperazine)の2種類の有機物を内包する天然laumontite型ゼオライトの育成に成功し、詳細な構造解析の結果、内包される有機分子の電価および立体構造に対応して骨格構造の遷移元素の配列が変化していることが判明した。すなわち、骨格構造中のコバルトおよび亜鉛などの遷移元素の分布と内包される有機分子の配列の相互作用を解明できた。また、この新しいlaumontiteは、内包される有機分子とそれに対応する遷移元素の配列によって、対称中心の有無が変化する、これまでの常識を覆す将来性の高いゼオライト物質である。この特性を物理化学的に検証するために、本年度は科学研究費の補助金を用いて、結晶の非線形光学効果を測定することができる光学物性測定装置の完成に着手した。またこれまでの研究成果によって、マンガンでゼオライトの骨格構造を修飾することが、困難であることも判明した。しかし、この研究過程で、マンガン系リン酸塩化合物にゼオライト類似のイオン交換能を有する可能性のある物質を作成することができた。
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