研究概要 |
平成17年度は,主に次の3点について,実験および研究の取り纏めをおこなった. サブリキダスでのマグマの粘性係数と結晶組織の関係について富士1707年高アルミナ玄武岩の実験結果を取りまとめ公表し,さらに北九州アルカリ玄武岩について実験をおこない投稿原稿を取り纏めた.アルカリ玄武岩ではリキダス相はかんらん石で,その晶出によって液の粘性係数は増加する.また,リキダス下60℃で平板状斜長石が晶出しても相対粘性係数はEinstein-Roscoe-Marshの式とよく合い,高アルミナ玄武岩の場合(相対粘性係数が4-5倍に達する)とは異なっている.この違いについては,Krieger & Dougherty式の係数についての理論式の解析から斜長石の縦横比が高アルミナ玄武岩の場合大きなために相対粘性係数が大きくなったものと判断された. 島弧玄武岩中にはしばしば高An斜長石斑晶が含まれるが,その成因については定量的な検討が不十分であった.今回高温高圧実験で液組成を一定にした場合の斜長石-メルトのCa-Na元素分配関係を含水量と圧力の関数として検討した.交換分配係数はメルトの含水量が増加すると増加し,圧力が増加すると減少する.4kb以上ではリキダス相に単斜輝石が現れるので斜長石はAnに乏しくなる.これらのことから同じ液で最も高いAn量を持つ斜長石は2-3kbの水に飽和したメルトから晶出すると考えられる. 火山噴火では,マグマは上昇・発泡・脱ガスしそれに伴い結晶作用が生じる.雲仙岳1991-1995年噴火では石基結晶度は大半が20-30%であり,その晶出がどの深さで生じたか興味が持たれる.差当り,水にほぼ飽和した石基組成について等圧冷却実験で100MPaでのTemperature-Time-Transformation図(TTT図)の作成を試みた.しかし800℃以下では実験生成物が細粒であり解析が困難であった.現在,等温減圧実験と等圧冷却実験を組み合わせて,石基結晶の核生成深さを推定する試みをおこなっている.
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