研究概要 |
揮発性成分がケイ酸塩メルト構造へ及ぼす影響を多核NMR分光法で調べた.揮発性成分としては水と硫黄の2種を研究した.試料は内熱式ガス圧装置で最高2kbar,1500Cの条件で保持し,急冷して得たガラスである. 水についてはMgO-CaO-SiO_2系でMgCaSi_2O_6中心として組成を系統的に変化させた試料を合成した.測定には^1H MAS NMR,^1H-^<29>Si-CP-MAS NMR,^<29>Si MAS NMR法を使った.その結果^1H MAS NMRのスペクトルにおいて,これまで観察されていない化学シフトをもつピークを見つけた.含水結晶の化学シフトと本研究で行った量子化学計算による結果から,このピークはSiに結合していないfree OHであると同定された.free OHはこれまでその存在が予想はされていたが,実験的に明確に示したのは本研究が初めてであり,本研究の大きな成果である.またfree OHの量が重合度や陽イオンの種類によって系統的に変化することが分かり,これは天然のシリカに乏しいマグマでもこの溶解機構が重要であることを示唆する.またNMRスペクトルの解析からSiに結合しているOHについて,その水素結合の分布についての情報も得た. 硫黄を含む系についてはNa_2O-SiO_2系組成で実験を行った.硫黄としてガラスに添加した場合にはガラス構造の重合化が観察された.これは硫黄とガラス中のNaが反応して,Naをネットワーク構造から引きはがすためであると解釈した.硫黄種についてはNMRではよく分からないため,Raman分光法で主に調べた.その結果硫酸塩種とNa_xS種が比較的酸素分圧の高い領域で共存していることが分かった.酸素分圧の低い場合には^<29>Si MAS NMRからSが酸素を置換していることが分かった. なお本研究の成果は2003年夏に倉敷で開催されたGoldschmidt Conferenceで我々がコンビーナーを務めた「メルトとフルイド」スペシャルセッションで発表された.これらの論文は2004年12月号のGeochim.Cosmochim.Actaの特集号に印刷される予定である.
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