1.大崩山花こう岩体の岩石学的研究 宮崎県大崩山花こう岩体の岩石学的研究を行い、サブソリダスでの再平衡に関する顕著な知見をえた。 大崩山花こう岩体は高橋正樹氏による詳細な研究によって、一つのzoned magma chamberが固化したものであることが明らかになっている。その著しい特徴は、岩体内部で高度により鉱物のモードが系統的に変化することである。すなわちルーフ境界から高度が下がるにつれて有色鉱物の含有量がまし、石英・カリ長石の含有量は減少する。この研究を受け、われわれはルーフ境界から冷却が進行するならば、高度が下がるとともにサブソリダスでの再平衡の進行度が増大するのでないかと考えた。そこでサブソリダス反応として普遍的に観察されるミルメカイトとパーサイトの発達の程度を解析し、次の重要な知見を得た。 (1)ミルメカイトの幅は、平均値ならびに最大値ともに高度が下がるにつれ有意に増大する。平均幅は0.02mm程度から0.15mm程度まで増大し、最大幅は0.08mm程度から0.35mm程度まで系統的に増大する。 (2)パーサイト中のラメラの平均幅は高度とともに系統的に増大し、0.01mm程度から0.22mm程度まで変化し、その差は有意である。また母相に対するラメラの体積分率も系統的に増加する。 2.花こう岩系の拡散律速型メルト成長 花こう岩メルトを形成する地殼物質の融解過程のカイネティクスを理解する目的で、非平衡条件下での融解実験を行った。石英-カリ長石-アルバイト-水の系ならびにその部分系を対象として、鉱物粒子間に形成されるメルト層の発達過程を調べた。その結果次のことが分かった。 (1)メルト層中には組成勾配があり、メルトの形成は拡散律速による。 (2)メルト層の厚さの時間発展は、双物型成長則に従う。 (3)双物型成長則からメルト中の最も遅い成分の拡散係数を見積もることが可能。
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