地球表層環境での珪酸塩鉱物の溶解に及ぼす微生物の影響を定量的に評価することを目的として、バクテリアを含む反応系での種々の鉱物(スメクタイト、カオリナイト、アモルファスシリカ)の溶解実験を行った。これらの実験から、各鉱物の溶解速度をバクテリア細胞数をパラメータとすることで、溶解速度に対するバクテリアの見かけの影響を定量的に評価し、さらに、バクテリア細胞から放出される有機分子の反応サイト数を用いた実質的な影響の定量を行った。通常、バクテリアの関与する溶解反応では、バクテリア細胞から外界に放出される種々の有機分子による配位子促進溶解が支配的な反応機構となる。そのため、配位子としての有機分子の反応性を数値化し、それらをパラメータとすることで、溶解速度に及ぼす実質的な影響の評価は可能となる。そこで、本研究では、バクテリア細胞から放出される主要有機分子であるタンパク質と多糖の配位子としての反応性を官能基の解離によって生じる電荷サイト(反応サイト)数をパラメータとすることで溶解速度へのバクテリアの実質的な影響を評価した。実験ではアルブミンおよびキサンタンを用い、これらの有機分子との反応によるスメクタイトの溶解速度を測定した。また、これらの有機分子の反応サイト数を酸塩基滴定データのFITEQL解析から求め、反応サイト数をパラメータとする溶解速度式を導いた。その結果、鉱物の溶解に及ぼすバクテリアの影響を反応機構に基づいて定量的に評価することが可能となった。
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