研究課題
地球物質の酸素同位体比(^<17>O/^<16>O比[δ^<17>O]および^<18>O/^<16>O比[δ^<18>O])をδ^<17>O-δ^<18>O空間にプロットすると、大部分はδ^<17>O=0.52xδ^<18>Oで示される質量依存型の線上にプロットされるのに対し、隕石の場合は種類によって異なった場所にプロットされる。また質量依存性の同位体分別を示すものと非質量依存性の同位体分別を示すものとに分類される。これらのことは、隕石母天体が形成された初期太陽系内で酸素同位体比不均質を引き起こす過程のあったことを反映しており、隕石の酸素同位体比は初期太陽系の形成過程をひも解く上で極めて重要な鍵である。南極で発見された隕石はすでに13,000個を越すが、大部分の南極隕石の酸素同位体比は未測定のままである。その意味で南極隕石は惑星科学情報の宝庫である。これらを精選し系統的に分析することを通じて、初期太陽系内ならびに母天体内部で起きた様々な物理化学プロセスの解明を目的としている。今までのところ、国立極地研究所の保有する南極隕石のうち、以下のものについて酸素同位体比を測定した。Y-980702 (type R6)、Y-981710 (diogenite)、Y-981651 (shock-melted glass derived from achondrite)、Y-82094 (CO3?)、Y-981203 (primitive achondrite)、Y-983101(primitive achondrite)、Y-981725 (lodranite)、Y-983717 (diogenite)、Y-980318 (cumulate eucrite)。これらのうち一部のものは地球上に落下した後に風化を受けているので、風化生成物を取り除く目的で、全岩を砕いた後にHCI(6M)処理を行った。それぞれの隕石の酸素同位体比をδ^<17>O-δ^<18>O空間にプロットしたところ、Y-82094 (CO3?)を除く試料は今までに知られている組成領域に入ることが分かった。HCl処理により、全体的に同位体比が僅かながら増加する傾向があり、風化には低い同位体比を持つ南極氷の影響がうかがわれた。Y-82094 (CO3?)はCOタイプの隕石としては新しい領域にプロットされ、さらに詳細な検討によりCOタイプ母天体に関する新しい情報が得られる可能性を示している。南極隕石以外にも、近年、日本に落下した十和田隕石ならびに狭山隕石についても酸素同位体比を分析し、それぞれH6タイプ、CMタイプであることを確認した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)