研究課題/領域番号 |
14340176
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
松本 吉泰 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (70181790)
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研究分担者 |
渡邊 一也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助手 (30300718)
高木 紀明 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教授 (50252416)
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キーワード | 一次元ナノ構造 / 光化学 / CO酸化反応 / Ag(110) / 構造揺らぎ / 走査型トンネル顕微鏡 / 反応活性点 / AgO |
研究概要 |
本研究では、高い空間分解能を有する走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いることにより、光反応効率と表面局所構造との関連を明らかにし、表面光反応における表面の不均一性についての本質的な理解を得ることを目的として実験を行った。本年度は、Ag(110)表面を酸化することによって得られたAgO一次元鎖の光化学に特に注目して研究を行った。 Ag(110)表面上に形成したAgO一次元鎖をまず走査型トンネル顕微鏡を用いて観察した。ここで、炭素原子を表面上に含むものとこれを含まない清浄なAg(110)表面を用いた。どちらの表面でもAgO一次元鎖は酸素被覆率が増加するにつれて(7x1)→(5x1)→…(2x1)と次第に列間の間隔が狭くなってくる。しかし、決定的な違いは前者では列間の間隔が広くても一次元鎖は直線構造を保っているが、後者では大きな構造揺らぎを示し、鎖は多くのキンクサイトを持つことである。これらの表面に紫外光を照射すると炭素を含む表面では次第に酸素原子が除去され、その結果一次元鎖の数が減少するのに対して、炭素を含まない表面ではまったく光照射の効果が見られなかった。これは、前者の表面では光照射によりCO_2が脱離することから、まず光照射によりAgO鎖が電子的に励起されることにより、AgO結合が弱くなり、この近傍にある炭素原子と酸素が反応しCOが形成され、それがされに酸化されてCO_2として脱離されることを明らかにした。 また、COによる熱的な酸素消失反応についても実験を行い、光化学反応との比較を行った。興味深いことに、この熱的な反応では炭素を含む表面ではほぼ零次的に反応が徐々に進行するのに対して、炭素を含まない表面では列間隔が(5x1)程度に広がると反応が急速に加速されることを見出した。これは、後者の表面でのAgO鎖の熱的揺らぎが大きな役割を果たしていることを意味している。 このように、光反応と熱反応を走査型トンネル顕微鏡を用いて実空間で比較検討することにより、両者にはそれぞれまったく異なる活性点があり、表面局所構造と反応との関連を明らかにすることができた。
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