研究課題/領域番号 |
14340176
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
松本 吉泰 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (70181790)
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研究分担者 |
渡邊 一也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助手 (30300718)
高木 紀明 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教授 (50252416)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | ナノ構造 / Ag(110) / 一次元鎖 / 走査型トンネル顕微鏡 / 構造揺らぎ / カーバイド / 光化学 / 酸素引抜反応 |
研究概要 |
本研究の研究対象としては主にAg(110)表面状に生成したAgO一次元鎖に注目して研究を行った。 この研究課題で最も重要な役割を果たしたのは、Ag(100)表面を酸化した時に得られる特異なナノ構造である。この表面は、酸化されると[100]方向にAgOが交互に並んだ一次元鎖ができる。AgO一次元鎖は列間に弱い反発力が働いており、(2x1)状態から酸素被覆率を低下させるのに応じて列間の間隔が開いてくる。ここで、二つの表面状態でAgO鎖の構造変化を比べてみた。一つは、炭素原子を表面に制御して添加した表面であり、もう一つはできるだけ炭素原子の無い清浄な葬面である。今までの研究で、次のようなことがわかっていた。すなわち、光反応がおきるのは前者のカーバイド的な炭素原子が存在する表面のみであることである。したがって、反応は表面近傍の光吸収によって開始され、(1)AgO鎖の電子励起、(2)活性化されたAgOセグメントと表面炭素の反応、(3)反応生成物であるCOの更なる酸化によるCO2生成とその脱離によって進行することがこれまでの研究で明らかになった。この上にたって、本研究において重要なことは、両表面では酸素被覆率の低下に伴う構造変化が著しく異なることであった。すなわち、炭素存在表面では、酸素被覆率が低下しても一次元鎖はその直線構造が揺るがず非常に低い被覆率においても対となって残る。これに対して、清浄表面では酸素被覆率が低下し、AgO鎖が(5x1)程度に広がると同時に一次元鎖の構造が大きく揺らぎ、多くのキンク状の断裂した構造をとる。もちろん、この表面を低温に保つと清浄表面でもAgO鎖の構造揺らぎはほとんど見られない。このように、表面状態を制御することにより、同じAgO鎖でもその構造変化と反応性の関係を明らかにすることができる。そこで、得られた重要な結果を以下にまとめる。 1.光反応は、表面に存在する炭素原子周辺から反応が起きる。これは、光反応に表面炭素が必要であるとした本グループの過去の研究結果とよい整合性を持つ。すなわち、電子励起したAgO鎖が相互作用する炭素原子が存在するところで、COが生成される。これは、観測したSTM像において反応がAgO鎖の断片化を起こしつつ進行する様子が見えているのに符合している。 2.COによる酸素引き抜き反応は基本的には鎖の端から起きる。これは、低温にして反応を進行させたとき、AgO鎖が両端から反応を起こし、短くなっていく様子がSTM像によって明らかになっている。 3.AgO鎖の熱的構造揺らぎがCOによる酸素引き抜き反応を加速させる。これは、まさに上記の反応活性点が構造揺らぎにより多く作り出されることを考えると極めて妥当な結果といえる。
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