研究概要 |
本研究の目的は,我々が最近成功した粉末試料での^<14>Nの高分解能NMR測定を一般的に行えるように完成すること,および,主にペプチドなど生体分子の構造研究に応用することである.この目的に向かって,15年度は (1)ペプチドの二次構造の代表であるαヘリックスとβシート構造に含まれる窒素の四重極パラメータの計算 (2)αヘリックスとβシート構造を取るモデルペプチド試料の合成 (3)モデル試料における測定を行った. 14年度にモデル化合物を用いて評価したab initio分子軌道計算(Gaussian98)を用いて,ペプチドの二次構造の代表であるαヘリックスとβシート構造に含まれる窒素の四重極パラメータの計算を行った.両構造で標準的なモデルを用いて計算した結果,αヘリックスに含まれる窒素の四重極はe^2qQ/h=-3.7MHz,η=0.27,βシートの窒素はe^2qQ/h=-4.1MHz,η=0.29と得られた.つまり,βシートの窒素の四重極の絶対値はαのそれよりも数100kHz大きいことが示唆された.この値に基づき線形のシミュレーションを行ったところ,この差は本手法で充分に観測可能な差であることが示された.そこで,αヘリックス,βシートをとることが知られている7種類(αヘリックス4種類,βシート3種類)のペプチドを固相合成法により準備した.今までの所,2種類の試料についてのおおまかな測定・解析が終わり,ほぼ計算で予測された挙動を示していることが確認されている.
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