研究課題
分子集合体の1エキシトンモデルから求められた多状態に通常のレーザー光を照射し、そのあとカットすることにより、緩和が小さい場合、空間的なエキシトンの回帰運動が見られることが予測された。この回帰運動は、空間的に広がった分布をもつ複数の擬縮重エキシトン状態がレーザー場により重ね合わせ状態になることに起因する。簡単なダイマーモデルやデンドリティックモデルについて検討し、分子間の相互作用を調節するよう配置したデンドティック分子集合体では、外縁部間あるいは外縁部と内縁部との間でエキシトンの回帰運動が生じることがわかった。エキシトン-フォノンカップリングを導入し、エキシトン状態間の緩和が入ると、この回帰運動は減衰していくことが判明した。今後、様々な構造での回帰運動の構造-特性相関や緩和との関係を明らかにし、量子光との相互作用の場合についても検討していくことは興味深いと考えられる。これまで2次元の分子集合体のエキシトン移動を取り扱ってきたが、これを3次元の分子集合体も扱えるよう拡張し、さらに、エキシトン-フォノン結合に起因する緩和をモンテカルロ波動関数法により取り扱う計算スキームを開発した。モンテカルロ波動関数法は、モンテカルロトラジェクトリー1本あたり考慮する基底の数にほぼ比例する計算量のため、従来のマスター方程式法(基底の二乗に比例)に比べて、より大きなサイズの系や多くの緩和チャネルをもつ系を取り扱うことが可能になると考えられる。今回は、2次のモンテカルロ波動関数法をナノスター分子集合体のエキシトン移動の移動に適用し、従来のマスター方程式法の結果を良く再現することが判明した。今後は、ポピュレーション緩和だけでなく、純粋位相緩和も取り扱えるように拡張する予定である。本研究の過程で新たに発見された新規の非線形光学物質系である開殻分子系については、実在系としてベンゼンのパラ位にイミダゾール環やトリアゾール環が置換したジラジカル系を考慮し、ジラジカル因子、荷電状態、スピン状態が三次非線形光学特性(分子レベルでは第二超分極率γ)に与える影響を詳細に検討した。最も信頼性の高いUCCSD(T)法の結果から、中間のジラジカル性をもつ場合が閉殻系(ジラジカル因子が0)に比べて著しく大きなγを与えることが予想された。また、正の荷電の導入により、ジラジカル因子の大きさは低下し、負の寄与が相対的に大きくなるのでγは小さな正または負の値をとることが予想された。スピン状態によるγの変化は、一重項と三重項ジラジカル系において検討した。Pauliの排他律から予想されるように、三重項ジラジカル系のγは一重項ジラジカル系のγに比べて大幅な減少を示した。今後さらに他の構造をもつ系や原子種をもつ系について検討していく予定である。
すべて 2005 その他
すべて 雑誌論文 (17件) 図書 (1件)
Synthetic Metals 154
ページ: 309-312
Polyhedron 24
ページ: 2653-2657
J.Chem.Phys. 122
ページ: 114315-1-114315-12
J.Phys.Chem.B 109
ページ: 7631-7636
Chem.Phys.Lett. 407
ページ: 372-378
Int.J.Qunatum Chem. 105
ページ: 615-627
ページ: 181-184
Physica B 370
ページ: 110-120
Journal of Nonlinear Optics, Quantum Optics 34
ページ: 29-32
ページ: 33-36
ページ: 37-40
ページ: 115-119
Chem.Phys.Lett. 418
ページ: 142-147
Chem.Phys.Lett. 419
ページ: 70-74
Journal of Computational Methods in Sciences and Engineering (in press)
Journal of Photochemistry and Photobiology A : Chemistry (in press)
Chem.Phys.Lett. (in press)