研究概要 |
本課題研究は,金属クラスター錯体をボトムアップ的な手法で集積することによりナノサイズの金属イオン集積体を構築し,その性質の設計と制御を目的としている.性質の異なる三種の金属クラスター錯体を対象とし,以下の研究を遂行中である.(1)可逆な酸化還元挙動を示すルテニウム三核錯体クラスターのオリゴマー系について,クラスター骨格間混合原子価状態を発生させ,骨格間の高速な電子移動の経路と速度についての詳細を研究を続けている.三核錯体三量体において,末端のクラスターユニット間の電子移動について,速度とメカニズムの面から検討を行った.カルボニル伸縮振動吸収線形の精密な解析よりa)末端ユニット間で直接電子が移動する経路と,b)中央のユニットを経由する間接的な経路の二種類が存在することを明らかにするとともに,いずれを経由するかは末端ユニット上の配位子のpK_aに依存することを明らかにした.2)白金(II)イオンを配位原子とする供与型金属-金属結合によるナノ構造体構築において,これまで配位を受ける側として単核錯体を主に用いてきた.今回、被配位金属としてロジウム(II)複核錯体を用い,Pt-Rh-Rh-Pt骨格をもつクラスター錯体を合成した.(3)有機配位子Hbpcaと鉄(III)イオンからなるクラスター配位子に基づく磁性ナノ錯体の構築に関し,bpca^-を介した磁気的相互作用の詳細を明らかにするため,bpca^-を含む様々な錯体の合成と磁気的性質についての研究を行った.その結果,その特異な架橋様式に由来する強磁性的相互作用の発現と,bpca^-を介して鉄(II)-鉄(III)を交互鎖状に配列させた錯体が単一次元鎖状磁石となることを見出した.
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