研究概要 |
1.ルテニウム三核クラスターオリゴマーの研究 ・酸化還元電位が異なる多数の1電子酸化還元波を示すような分子の構築をめざし,ピラジン架橋の直鎖状3量体,4量体を合成した.これらはそれぞれ11段階12電子,15段階16電子の可逆なレドックス波を示した. ・4,4'-ビピリジンを架橋配位子とするデンドリマー型オリゴマーの合成において,三核クラスター部分の架橋カルボン酸として,安息香酸やプロピオン酸を用いることにより,溶解度の高い第3世代のデンドリマー(22量体)や電位勾配をもたせた第2世代のデンドリマー(10量体)の合成に成功した. ・ピラジン架橋の非対称型2量体について,2報の論文「電荷移動異性体の検出」,「化学修飾による電子構造の非対称性の制御」を公表した. ・このクラスターがもつ酸化還元の高い可逆性を利用して電子プール試剤を構築することを目的として,トリアザシクロノナンにルテニウム三核クラスターを結合させた錯体配位子を合成した.その亜鉛(II)錯体は,アセトニトリル中で二酸化炭素の電解還元触媒として機能すること,すなわち多電子還元機能を有することを明らかにした. 2.供与型白金-金属間結合に基づくナノ構造体の研究 炭素配位の白金錯体をドナー,銀イオンやカドミウムイオンをアクセプターとする新しい数種の構造体を創出した.しかし,ルテニウムなどをアクセプターとする系の合成には今のところ成功していない. 3.チアカリクス[6]アレーンをナノクラスター生成配位子として利用する研究 今年度は主として希土類イオンを含む系の合成を行い,10種余りの新規2核,4核,8核錯体を合成した.そのほとんどは発光性の錯体であり,発光スペクトルの測定を行った.
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