研究概要 |
結晶構造がVO_6八面体とVO_5正方ピラミッドからなるフレームワークとそのトンネルサイトを占める陽イオンより構成されるベータバナジウムブロンズβ-A_<1/3>V_2O_5(A=Li,Na,Ag,Ca,Sr,Pb)を合成し、その電子状態を調べた。A=Pbを除く全ての化合物は金属-絶縁体転移を示す。この転移は、金属相で一様に分布していた電荷(d電子)が、本来V^<5+>にとって好都合の環境であった5配位VO_5正方ピラミッドサイトからV^<4+>にとって好環境のVO_6八面体サイトに電荷移動が起き、それが引き金となって、電荷の凝縮と秩序化が起こると理解される。興味深いことは、加圧により電荷秩序は抑えられ、A=Na,Agでは超伝導相が電荷秩序相に隣接して現われることである。これは酸化バナジウムでは初めての超伝導観測であり、また、量子臨界点近傍での相転移、電荷秩序と競合する超伝導という観点から、強相関電子系研究において注目されている。A^<2+>化合物では加圧により電荷秩序は融解するが超伝導は現われず、超伝導発現のための最適ドーピングレベルの存在を示唆している。 他の5配位正方ピラミッド関連物質としてYBaCo_2O_<5.5>の電子状態を調べ、6配位CoO_6のCo^<3+>は低スピン非磁性状態にあり、5配位CoO_5のCo^<3+>は中間スピン状態にあることを明らかにした。 5配位正方ピラミッドを利用した物質開発として、A-サイト秩序型ペロフスカイトMn酸化物およびCo酸化物の合成に成功した。これは、中間物質として希土類金属イオンとBaイオンが層状に配列し、希土類金属イオンは8配位を持つ酸素欠損型ペロフスカイト物質を合成し、それを低温で酸化させることにより得ることが出来た。A-サイト金属イオンがランダムに分布した従来型に比べ、様々な特異な電荷・スピン・軌道結合物性を示すことを見出した。
|