研究概要 |
以下に代表的な研究成果の概要を記す。 1)NaV_2O_5における電荷秩序転移の研究 5配位正方ピラピッド型のVO_5が稜および頂点を共有した2次元ネットワーク「トレリス格子」を持つNaV_2O_5において電荷秩序転移を見出し、低温電荷秩序相での電荷秩序パタンが面内ジグザグ型でc軸方向への積層様式はAAA'A'の4倍周期であることを決定した。また、高圧下では様々な積層周期を持った相が現れる"悪魔の花"相図を見出した。 2)ベータバナジウムブロンズβ-A_<1/3>V_2O_5(A=Li,Na,Ag,Ca,Sr,Pb)の研究 酸素6配位と正方ピラピッド5配位より形成される特異なV_2O_5フレームワークを持つベータバナジウムブロンズにおいて、A=Pbを除くすべての物質での金属-絶縁体転移と高圧下での絶縁体相に隣接する超伝導相(圧力誘起超伝導)をA^+物質で見出した。系統的な研究は、超伝導出現のための最適なドーピングレベルの存在と超伝導の起源としての電荷揺動の役割を示唆している。電荷揺動の起源として5配位の(V3)O_5にある電荷の不安定性が考えられる。 3)Aサイト秩序型ペロフスカイトMn酸化物の研究 合成雰囲気を制御することにより、中間生成物として正方ピラミッド型5配位MnO_5より構成される酸素欠損型ペロフスカイトMn酸化物RBaMn_2O_5(R=希土類金属)を合成し、それを低温酸化することにより、初めてAサイト秩序型ペロフスカイトMn酸化物RBaMn_2O_6の合成に成功した。また、従来のAサイト無秩序型とは異なる多くの新規な電荷・軌道・スピン自由度結合現象を見出した。それらは、Aサイトランダムネスの無さとフラストレーションを内包する特異な構造に起源を求められる。
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