研究概要 |
(1)リン酸トリエステル加水分解酵素類似機能 ‘end-off'型二核化コンパートメント配位子を用いたbis(μ-carboxylato)-μ-phenolato錯体[M_2(L)(AcO)_2]^+(M=Mn, Co, Ni, Zn)錯体をリン酸トリエステラーゼのモデルとしてtris(p-nitrophenyl)phosphate (TNP)→bis(p-nitrophenyl)phosphate (BNP^-)の加水分解を分光法およびESIマス質量分析法で研究した。加水分解能は、錯体の二核コアがMnMn〜ZnZn>CoCo>>NiNiの順に低下した。これは金属イオンに結合した水の求核性がこの順で低下することで説明される。リン酸トリエステラーゼは、MnMnではなくてZnZn二核コアを活性中心に持つ。これは、海水中の金属イオンの存在量がZn>>Mnであることで理解できる。 (2)リン酸ジエステル加水分解酵素類似機能 リン酸ジエステラーゼの機能モデルとして[M_2(L)(AcO)_2]^+(M=Mn, Co, Ni, Zn)錯体によるbis(p-nitrophenyl)phosphate(BNP^-)→mono(p-nitrophenyl)phosphate(MNP^<2->)の加水分解を研究した。加水分解は[M_2(L)(AcO)_2]^+ + BNP^-=[M_2(L)(AcO)(BNP)]^+ + AcO^-の平衡で生成する錯種[M_2(L)(AcO)(BNP)]^+を経由して進行し、加水分解能はMnMn〜CoCo>>NiNi>>ZnZnの順に低下した。ZnZn錯体の加水分解能が低い理由は、μ-acetato-μbnp錯体のコア構造が'rigid'で水分子の取込みが難しいためである。リン酸ジエステラーゼにはMnMnコアは存在するが、CoCoコアは見いだされていない。この理由は海水中の金属イオンの存在量がMn>>Coであることで理解できる。また、FcZnコアを有するpurple acid phophataseの最初の機能モデルの構築にも成功した。
|