励起分子間の相互作用と高温焼成を利用した新規な黒色顔料の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340216
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 水口 仁 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90281005)
• 研究分担者: 宮崎 修次 東洋インキ製造(株), 顔料研究所, 所長 ; 千住 孝俊 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助手 (70322097)
• キーワード: 有機顔料 / 黒色顔料 / ペリレン / 結晶構造 / 電子構造

研究概要

本年度は2種類の相補的な色調をもつペリレン顔料を固溶体で黒色を実現すべく、合成ならびにX線構造解析の立場から検討を行った。高温焼成により、2つの系は良く溶け合い黒色相を形成することが明らかになった。更に研究を進めるにつれ,ジアミンと結合したペリレン化合物が単一成分でもかなりの黒色度が達成できることが判明した。そこで検討内容をこのペリレン顔料に絞り、構造解析と単結晶の偏光反射スペクトル等による基礎検討に大半の時間をつぎ込んだ。その結果、ペリレン顔料では分子固有のバンドに加えて、分子間相互作用のバンドが長波長に出現することが明らかになった。つまり、分子のバンドと分子間のバンドの双方で可視域をバランスよく覆うことにより、黒色顔料が実現できることが分かりた。更に合成法の最適化ならびに反応後のトルエン洗浄処理により、理想的な黒色が実現できた。また、この顔料は粒子の比表面積が60m^2/gを越える、隠蔽力の大きな顔料であることも確認した。しかし、液晶カラーフィルターのブラックマトリックスあるいは複写機の黒色トナーとして利用する為には60nm以下の粒子径が必要であるとの要請が浮上した。小粒子化を機械的に行う過程で分子の積層方向に格子の乱れが生じ、長波長(650nm)のバンドの吸収強度が低下して黒色のバランスが崩れることが明らかになった。積層方向の分子配列の乱れは約500℃で高温焼成すると回復することから、目下、この工程を小粒子化のどの過程に組み込むかを検討中である。以上のように基礎的な段階は本年度の研究でほぼ終了したので、残された小粒子化の問題を技術的に克服することが来年度の課題である。

研究成果

• [文献書誌] J.Mizuguchi, K.Tojo: "Electronic structure of perylene pigments as viewed from the crystal structure and excitonic interactions"Journal of Physical Chemistry. B106. 767-772 (2002)
• [文献書誌] K.Tojo, J.Mizuguchi: "Refindment of the crystal structure of 3,4:9,10-perylene-bis (dicarboxyimide)"Zeitschrift fur Kristallograhie : New Crystal Structure. 217. 45-46 (2002)
• [文献書誌] J.Mizuguchi, K.Tojo: "Crystal structure of N, N'-bis(2-(4-pyridyl)ethyl)-perylene-3,4:9,1O-bis(dicarboximide)"Zeitschrift fur Kristallograhie : New Crystal Structure. 217. 247-248 (2002)
• [文献書誌] K.Tojo, J.Mizuguchi: "Refinement of the crystal structure of 3,4:9,10-perylene-tetracarbocylic dianhydride (αform) at 223K"Zeitschrift fur Kristallograhie : New Crystal Structure. 217. 251-252 (2002)
• [文献書誌] K.Tojo, J.Mizuguchi: "Refinement of the crystal structure of 3,4:9,10-perylene-tetracarbocylic dianhydride (βform) at 223K"Zeitschrift fur Kristallograhie : New Crystal Structure. 217. 253-254 (2002)
• [文献書誌] J.Mizuguchi, K.Tojo: "Crystal structure of N, N'-bis(2-phenylpropyl)perylene-3,4:9,1O-bis(dicarboximide) 223K"Zeitschrift fur Kristallograhie : New Crystal Structure. 217. 517-518 (2002)