研究課題
基盤研究(B)
本研究は有機物を始めとする絶縁物への有効な超伝導化の手法として注目されている電界効果トランジスター(FET)について、大きな誘電率を持っSrTiO_3などの酸化物を基板とした新しい構成からなるFET構造を構築し、FETでの超伝導を電気抵抗、磁化の両面から総合的に検証することを目的としたものである。さらに、新しいFET構造を利用して広範な有機-無機物へのキャリアドーピングを行い、超伝導、磁性の制御を始めとした新奇物性・機能の発現を目指した。FETにおいてチャンネル層に多くのキャリアを誘起するためには誘電層の静電容量を大きくする必要がある。そのため、数百-数万と大きな誘電率を持つSrTiO_3(STO)の単結晶を数十μmまで薄くした基板の開発を行った。メカノケミカル研磨法により数mm角のサイズを持つ基板で、最も薄い厚さで20μmまで作製できるようになった。FETにおいてソース-ゲート間に電場を印加した場合、シミュレーションからソース近傍の数μmの領域で電場の強度が大きくなり、誘起されるキャリア量も多くなることが知られている。そのため、チャンネル層のキャリア変調量を大きくし、電気抵抗など物理量の大きな変化をねらうためにはソース-ドレイン間の距離を数μmに短くすることが重要になる。そのため、集束イオンビーム(FIB)によりソース、ドレイン電極を数μm-サブμmの間隔で形成できるようなメタルマスクの開発を行った。チャンネル層上にソース-ドレイン電極を蒸着したところ、2μm程度の間隔でも良好な電極が形成できることが明らかになった。C_<60>(n型)やペンタセン、La_2CuO_4(p型)などについて50μmのSTOを誘電層としたFETを作製、特性測定を行った。それぞれの物質の伝導キャリアに対応するソース-ドレイン特性のゲート電圧依存性が確認されたが、50μmの基板の厚さではまだ、静電容量が足らず、期待される超伝導性の発現には至っていない。今後FIBによりソース-ドレイン間のSTO基板を数μmまで薄くした構造で、誘起キャリア濃度を1桁増加させることが必要である。
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