結晶の円二色性スペクトル

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14340220
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 小島 秀子 愛媛大学, 工学部, 助教授 (20304644)
• キーワード: 結晶光学活性 / 円二色性スペクトル / 旋光能 / キラル結晶 / 有機結晶 / 複屈折 / キラリティー / ヘリックス構造

研究概要

私は、今までほとんど測定されていなかった有機結晶の旋光能を、結晶用光学活性測定装置HAUP (High Accuracy Universal Polarimeter)を用いて測定を可能にする研究をここ数年間行い、分子配列と旋光能の関連性を初めて明らかにすることができた。このため次は、化学において重要な位置を占める円二色性スペクトルも結晶状態で測定できるようにしたいと思い、昨年度、次世代型HAUPを作製した。本装置は光源としてキセノンランプを用いており、紫外から可視領域までの連続波長で測定可能である。本装置により、結晶の円二色性スペクトルばかりではなく、すべての光学活性特性(円二色性、旋光能、旋光分散)を測定できる。勿論、複屈折、直線二色性も求まるので、結晶のすべての光学特性の測定が可能である。
本装置を用いて円二色性スペクトルを測定するには、従来の一次元法(簡便法)ではなく、二次元法により沢山のパラメーターをとってデータ処理する必要がある。このため本年度は、測定を自動化するためにソフトの開発を行った。この結果、オンラインでの連続自動測定が可能となり、大幅な省力化、高機能化を図ることができた。本装置により、まず標準試料の右水晶、左水晶の光学活性を一次元法および二次元法を用いて測定し、良好な結果を得た。
以上、この5年間にわたって行った結晶の光学活性に関する本研究により、従来ほとんど測定されていなかった有機結晶の光学活性特性(円二色性、旋光能、旋光分散)をすべて測定できるようにした。本研究は高く評価されており、これからのキラル固体化学の構築、材料化学、生命化学への応用に向けて大きな一歩を踏み出すことができた。

研究成果

• [文献書誌] H.Koshima, A.Nakata, M.Nagano, H.Yu: "Photoreaction of 9-Methylbenz[c]acridine with Diphenylacetic Acid in the Chiral Cocrystal"Heterocycles. 60. 2251-2258 (2003)
• [文献書誌] H.Koshima, W.Matsusaka, H.Yu: "Preparation and Photoreaction of Organogels Based on Benzophenone"J.Photochem.Photobiol., A : Chem.. 156. 83-90 (2003)
• [文献書誌] H.Koshima, Masashi Kubota: "High-Throughput Synthesis of Alkylbenzophenones with Indium Triflate in the Absence of Solvents Using Microwave"Synth.Commun. 33. 3983-3988 (2003)
• [文献書誌] H.Yu, H.Koshima: "A Convenient Asymmetric Alkylation of Glycine Imine Esters Using Solid Supports"Tetrahedron Lett.. 44. 9209-9211 (2003)
• [文献書誌] H.Koshima, H.Miyamoto, I.Yagi, K.Uosaki: "Cocrystals of 2-Amino-5-nitropyridine with Benzenesulfonic Acids for Second Order Nonlinear Optical Materials"Mol.Cryst.Liq.Cryst.. (In press).
• [文献書誌] H.Koshima: "Absolute Asymmetric Photoreactions of Acridines with Diphenylacetic Acid in the Cocrystals"Mol.Cryst.Liq.Cryst.. (In press).
• [文献書誌] H.Koshima: "Chiral Photochemistry"Marcel Dekker, Inc.(In press).