分子を構成成分とした磁石は、有機合成を最大限に活用した化学修飾性にあり、その結果、無機物質では見出されない特異な機能発現が期待される。本研究代表者の研究成果を含め、これまでに得られている知見から、磁性起源化学種の固体中における三次元配列が、磁気性質を支配する重要なパラメーターであることが予想されている。しかしながら、一般に、固体中における分子配列を制御することは困難であり、試行錯誤の域を脱しない。 本研究では、本研究代表者が開発に携わっている金属ポルフィリンを用いた分子性磁石に着目し、構造が明確なポルフィリン多量体を用いることにより、上述の問題、即ち、磁性起源化学種の次元性の効果を評価することを目指した。このようなポルフィリン多量体は、共有結合で連結されているため、結晶中に於いてもその構造が保たれるため、あいまいさ、偶然性を完全に排除することが可能である。 本年度は、パラフェニレンで連結したポルフィリン多量体を用いて錯体合成を行った。各種スペクトル解析より、この錯体は、当初計画していたタワー型錯体であることが明らかとなった。現在、磁気挙動の詳細を評価しており、考察を行った後に発表を行う。
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