研究概要 |
(1)ナノ分子の分子軌道法や密度汎関数法で最も時間のかかる二電子積分を高速に計算できるプログラミングを行った。また、メモリーに可能な限り二電子積分を保存するSemi-InCore法を開発して、ナノ分子の電子状態の超並列高速計算を実現した。ベンチマークテストで、計算速度はCPUの数が増大すると飛躍的に加速され、CPU数が16でも計算速度は25倍以上にもなる。 (3)金属内包フラーレンを効率よく合成するための条件を明らかにするために、Ca@C_<72>,Ca@C_<74>,Ca@C_<82>,La@C_<82>等を取り上げて、理論計算によりエントロピーの温度依存性を系統的に明らかにした。また、特定の異性体を選択的に合成するためにはどのような温度条件が最適かを理論予測した。このような温度効果は、C_<60>F_<36>やC_<60>H_<36>などのフラーレン誘導体の異性体の生成分布にも適用できることを示した。 (4)分子デバイスへの応用が期待されるLa_2@C_<80>をジシリランなどの有機ケイ素分子の付加反応で外側から化学修飾することにより、2個のLa原子のランダムな三次元回転を面内の二次元回転に制限できることを理論予測した。また、スピン量子コンピュータへの応用やスピンプローブとして注目されているN@C_<60>のN原子上のスピン密度すなわちESR超微細構造定数も有機ケイ素分子の化学修飾によって制御できることを見いだした。また、様々な電子親和力とイオン化ポテンシャルをもつ有機分子や有機金属分子を内包する単層カーボンナノチューブの一連の理論計算により、電流の制御が可能であることを見いだした。 (5)遷移金属を内部ドープしたシリコンクラスターやゲルマニウクラスターの構造と電子状態の特性を明らかにした。またシリコンやゲルマニウムを骨格にもつホモ芳香族性の多面体構造の設計を行った。
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