研究概要 |
複数の分子が弱い相互作用によって結合した超分子は,協向的な作用によって個々の構成分子とは異なる機能の発現が期待できる。本研究では,アゾ化合物がシクロデキストリン(CyD)と包接錯体を形成する際のUV-Visスペクトル変化,およびCyD空洞のキラリティーに誘導されたアゾプローブの誘起円二色性(ICD)スペクトル変化に着目し,B15C5骨格を認識部位に持つクラウンエーテル型アゾプローブを新たに設計した。アルカリ金属イオン認識に伴うアゾプローブのγ-CyD内での選択的ダイマー形成は,アゾ官能基間め励起子相互作用を誘起し,UV-VisスペクトルおよびICDスペクトルに大きな変化が現れることを明らかにした。重金属選択的な複合体センサーの開発を目的として,擬クラウンエーテル骨格のポダンド構造と,情報変換部位にピレンを導入した蛍光プローブ(PD-18C6)を設計し,γ-CyDとの複合体形成に基づく水中での鉛イオン認識機能を調べた。PD18C6/γ-CyD複合体は,水中でピレン由来のモノマー蛍光を示すが鉛イオンの添加により,モノマー蛍光が減少し,長波長側にピレンダイマー蛍光が現れる。銅イオンや他の遷移金属イオンの応答は全く認められず,鉛イオン選択的な超分子応答が得られることを明らかにした。鉛認識機能を有する擬クラウンエーテル骨格のポダンド型認識サイトと酸解離型ダンシルスルホンアミド基を蛍光団とする蛍光プローブを設計し,ミセル複合体としての重金属イオン認識機能を調べた。その結果,臨界ミセル濃度よりもわずかに低い濃度域で,鉛イオンに対し著しい発蛍光応答が起こることを見出した。これは,錯形成反応が疑似ミセル形成を促進して起こる新しいミセル増感型の超分子応答である。
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