本申請研究は、ナノメータ環境における酸化還元挙動の異常性、例えば、環境がナノメータに近づくにつれて平衡定数が異なってくること、反応速度定数が変化すること、反応活性が大きくなることなどを、電気化学反応を題材としてその基礎を追求するとともに、分析的応用に発展させることを目的とする。 界面張力と微小電極挙動との関連:ナノ電極の異常性のひとつとして、電極|絶縁体の界面エネルギーの関与を考えた。そこで、界面張力を正確に測り、その値をナノ電極|絶縁体の界面エネルギーの算出に当てはめた。具体的には、微小圧力計を用いて電極と絶縁体の表面張力を測定した。ところが、誤差のほうが大きく、界面張力の大きさ依存性は得られなかった。 種々の溶媒中でのフェロセンの半波電位と電極との大きさの関係が得られたので、それらのデータを総括的に議論した。特にジクロロメタン中におけるフェロセンの電極反応速度が遅いことがわかったので、この系に集中してボルタモグラムを測定した。電極反応速度の移動係数を求めたところ、標準値である0.5をはるかに大きい2.4となり、ナノメータ電極における反応の異常性に関する定量的なデータが得られた。 一方、電極の大きさを拡散限界電流から求めてきたが、その方法が正しいかどうか検討した。電流の測定には、市販の白金、金、カーボンファイバーを用いた。理論では電流が電極半径に比例するが、実測では電極が小さくなるにつれて理論値より小さい値が得られた。その原因はまだ不明であるが、反応速度の問題ではなく、微小領域の拡散そのものに問題があるのではないかと提案している。
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