ファイバーを媒体とするマイクロ分析システムは、操作が簡単であるばかりでなく、分析後のクリーンアップを必要としないことから、システムの自動化が可能であると考えられる。また、試料前処理段階の抽出効率に関しても、細管中を試料が流れることから、媒体表面との接触面積が大きく、高効率の試料前処理が達成できる。更に、マイクロ化による環境に対する負荷の大幅な低減も最も重要なポイントである。有機溶媒使用量を数μL以下にできることから、分析に際しての環境負荷は最小化可能であり、また、スケールメリットと合わせて、時代に合った分離分析システムの開発が可能である。 本研究は、上記のような分析システムのマイクロ化の視点に立ち、新規な概念に基づくファイバーを媒体して使用するマイクロ分離分析システムの構築を目的とするものである。平成15年度には具体的に以下のような研究成果が得られた。 まず、フタル酸エステル類などに代表される環境汚染物質および三環系抗うつ薬などの薬物の微量分離分析に対して、分析システムの自動化、大量処理化について検討した。また、平成14年度の検討結果に基づき、コンピュータコントロールによるバルブ変換、送量コントロール、さらには分離システムのコントロールを可能にする総合分析システムを開発した。 分離手法としては、ファイバーを分離媒体とするLC、CECおよびGCまでの幅広い分離分析手法について検討した。その結果、試料前処理ならびにその後オンラインで行う分離分析プロセスを含めた全分析プロセスにおいても、有機溶媒をほとんど使用しないマイクロ分析システムを開発し、微量の分析対象試料に対しても、高分離能で分離するとともに高感度で検出し得る高性能システムの構築に成功した。尚、上記の研究成果は、添付リストの学術論文のみならず国際会議における講演等を通して国内外に広く発表してきている。
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