研究課題
基盤研究(B)
哺乳動物では内耳蝸牛の色素細胞が欠損すると聴覚も無くなってしまう。本研究の目的は、「解明の進んでいない内耳色素細胞の発生機構と新しい機能の発現機構を遺伝学的に解明し、それがどのようにして進化してきたかを推察するための端緒とする」ことである。まず内耳色素細胞の特徴を明らかにすることを目標に、内耳色素細胞の色は皮膚や毛色の色と同じか否かを、毛色変異体マウスを用いて調べた。その結果、これらには明らかな相関関係はなく、色素を産生できるマウスにおいては、内耳の色素細胞は総じて黒く見えた。次に、内耳色素細胞の存否が、内耳の遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにするために、内耳色素細胞が分化せずに遺伝的難聴となる小眼球症変異体{Mitf(Microphthalmia-associated transcription factor)}のMitfmi-bw変異体と野生型のマウスから、当該細胞が位置する血管条周辺を取り出し、cDNAライブラリーを作成し、両者の間でサブトラクションを行った。またこのライブラリーを元に、野生型と変異体のマウス間でディファレンシャルスクリーニングを行った。一方、野生型と上記変異体の蝸牛由来mRNAを用いて、マイクロアレイによる発現解析をも行った。これらの結果を基に、着目するクローンについて、インシツハイブリダイゼイション法によってマウス内耳における発現解析を行った。組織化学的方法と網羅的なクローン解析との間の結果を説明することが難しいクローンも多くあったが、色素細胞自身で強発現するもの、色素細胞以外での発現が顕著なもの等、興味あるローンが得られた。これらの中にはストレス耐性に関わると思われる配列も有り、内耳色素細胞システムの機能解析に重要な発見ではないかと期待している。これらの中にはそのホモログがホヤ脳内色素細胞で発現している物もあり、感覚器を構成する色素細胞の進化的な意義も興味深い。
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