研究課題
基盤研究(B)
遺伝子増幅は広汎なヒトがんの悪性化に寄与している。増幅した遺伝子は、自律複製する染色体外遺伝因子であるDMか、染色体上のHSRに局在する。我々は以前、哺乳動物複製開始領域(IR)と核マトリックス結合領域(MAR)を持つプラスミドが効率よくDMやHSRを形成することを見いだした。また、DMががん細胞から排出されるとがん細胞が脱がん化、分化することを見いだした。DMの排出は、細胞質に生じる微小核への選択的な取り込みを介していた。微小核への取り込みは、細胞周期進行に伴うDMの特異な細胞内動態に原因があった。このような動態と微小核を介する排出は、多種多様な自律複製する染色体外遺伝因子一般に共通する可能性が高い。平成14年度から17年度まで行った本研究では、自律複製する染色体外遺伝因子の細胞内動態と細胞外排出を支配する分子機構の理解を深めるとともに、それを細胞核や染色体機能の理解に応用する基礎研究や、組み替え蛋白質生産技術へ応用する研究を行った。具体的には、1)ヒトがん細胞に見られるDMの細胞内動態と、微小核への選択的取込みの分子機構に関する研究、2)哺乳動物細胞に導入された遺伝物質の、細胞内動態と細胞外排出機構に関する研究、3)自律複製する染色体外遺伝因子を介する遺伝子増幅の機構に関する研究、4)増幅した遺伝子領域からの遺伝子発現に関する研究、5)簡便で効率の良い新規遺伝子増幅系を用いた、有用蛋白質量産系樹立に向けた研究、6)染色体外遺伝因子により形成された長大で均質な染色体領域の特性を利用した、間期細胞核の機能構造に関する研究、を行い、それぞれ大きな成果を挙げることができた。
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