1.体サイズ-密度関係の解析に関するデータ処理と理論的な検討を昨年度に引き続きおこなった。 2.ハビタットの複雑性とベントス群集の関係に関するデータ処理を進めた。昨年度の研究で明らかになったところの、複雑性が増すに従い平均体サイズが減少する現象について、さらに解析をおこなった。大変興味深いことに、同じ現象が異なる季節でくり返し見られたが、その理由は必ずしも同一ではないことがデータの詳細な検討によって確認された。すなわち、種内における体サイズの変異性がハビタットの複雑性の変異と対応する場合と、種間における体サイズの違いがハビタットの複雑性に呼応する場合とがあると示唆された。ハビタットの複雑性はいろいろな要素を含むとの観点から、要素ごとに群集の諸形質にどのような影響を与えているのか、あるいは関係を形成しているのか、検討した。 3.ロンドン大シュミット博士との協議に基づき、ヨーロッパ大陸および英国の河川動物群集データを使って、体サイズ-密度関係とマルチフラクタル性に関連する解析を進めた。底質粒度分布にあらわれたマルチフラクタル性と体サイズ分布のそれとがある程度関連している傾向があり、その点についての検討を進めた。膨大なデータセットのうち、今年度は特に直線回帰における傾きの変異性に注目した。 4.シュミット氏との共同研究の中で、体サイズ-密度関係および種アバンダンスパターンの解析に関連し、多様性の中立理論に関する考察を進めた。中立理論の理論的基盤を検討した際に、1つの重要な前提となっている種分化の様態に関する仮定にこれまで指摘されたことのない問題が発見されたので、その点についての再検討が必要となった。そのため、研究協議を進めている。
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