ペルオキシソームタンパク質は、分子内部に存在するPTS1もしくはPTS2と呼ばれる輸送シグナルの働きによって、サイトゾルからペルオキシソーム内へ輸送される。前年度の研究では、PTS1やPTS2を識別する2つのレセプター(Pex5pとPex7p)をアラビドプシスから同定するとともに、Pex5pとPex7p、およびPex5pとペルオキシソーム膜タンパク質Pex14pが結合能を有することを生化学的解析によって明らかにした。本年度は、これらのペルオキシソーム輸送因子間の結合が果たす役割をin vivoで明らかにすることを目的とした。いくつかの方法を試みた結果、RNAi法を用いた遺伝子発現抑制が有効であると判断し、PEX5およびPEX7遺伝子発現抑制株を作成した。これらの株を解析した結果、Pex5pを欠失するとPTS1タンパク質とPTS2タンパク質の両方の輸送が阻害されることが明らかになった。この株のペルオキシソームは、脂肪酸β酸化能と光呼吸の両方の機能が失わていた。Pex5pのカルボキシ来端を欠損したPex5pΔ7を過剰発現した場合にも、同様の表現型が認められた。一方、Pex7pを欠失した場合にはPTS2タンパク質の輸送のみが阻害されていた。この株のペルオキシソームは正常な光呼吸能を有するが、脂肪酸β酸化能は失っていた。以上の結果から、Pex5pとPex7pがサイトゾルでレセプター-カーゴ複合体を形成していること、またPex5pとPex14pの結合がレセプター-カーゴ複合体をペルオキシソームへ引き寄せる原動力になっていることをin vivoで証明した。
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