M期促進因子(MPF)の調節サブユニットであるサイクリンBの翻訳開始は卵成熟誘起に重要である。本研究ではサイクリンBmRNAの形態変化に関わる分子同定と、細胞質ポリアデニル化エレメント結合蛋白質(CPEB)とPumilioの機能相関を軸に研究した。ホルモン刺激からサイクリンB翻訳に至る情報伝達系とMPFの作用機構についても解析した。 1.サイクリンB mRNA凝集体形成に関わる蛋白質同定 mRNAアフィニティー精製により数種の蛋白質を検出した。 2.サイクリンB mRNA翻訳開始に関わる蛋白質 Pumilio、CPEB、Maskin、切断・ポリアデニル化因子、ポリA結合蛋白質、ポリA合成酵素、真核生物開始因子4Eの卵成熟における挙動と相互作用の変化を追うことに成功し、Pumilioのリン酸化CPEBからの解離がサイクリンB翻訳開始を誘起する可能性を示した。 3.ホルモン刺激からサイクリンB翻訳に至る情報伝達 アカガエル卵成熟におけるホルモン刺激からサイクリンB翻訳開始までの情報伝達経路におけるフォスファチジルイノシトール3-キナーゼ/プロテインキナーゼB(PI3-K/PKB)の関与を調べ、PI3-Kの関与は考えられるが、PKBの機能は疑問と結論された。 4.MPFの作用機構 アカガエル卵でサイクリンB1とB2の機能解析を行い、染色体と微小管凝集体の動物極への移動にはサイクリンB1からなるMPFが、二極型紡錘体形成にはサイクリンB2からなるMPFが必要であることを明らかにした。MPFとMAPキナーゼの卵成熟における機能の分別にも成功した。ツメガエル卵成熟におけるガンマチューブリンの挙動を追跡し、それがダイニン依存性であることを明らかにした。また、緑蛍光蛋白質との融合蛋白質としてガンマチューブリンの変異蛋白質を卵母細胞で強制発現させることにより、本分子内の機能部位を特定した。
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