研究概要 |
分子生物学的手法と生化学的手法を用いてアワヨトウ幼虫血球細胞からGBPレセプタータンパク質または遺伝子の同定を試みた。まず、前者の方法は、血球細胞からcDNAを調製し、これらをアフリカミドリザル由来のCos7細胞で発現させ、その中からGBPと親和性を持つ膜タンパク質を提示している細胞をパニング法あるいはセルソーターによってスクリーニングし、最終的にGBPレセプター遺伝子の同定を試みるというものである。この方法によって血球由来のcDNAからGBPに特異的親和性を示す細胞膜タンパク質の遺伝子の同定に成功した。単離したcDNAフラグメントの全長は約1.6kbpで、アミノ末端側に細胞膜貫通ドメインが一ケ所存在する。現時点ではcDNA全長の塩基配列決定には至っていないが、これまで決定したcDNAフラグメント塩基配列の情報を基に、ORFの全長を明らかにすべく、RACE法によって5',3'両末端の一次構造を目指している。さらに、cDNAの全長のクローニングができ次第、再度Cos7細胞で発現させGBPとの結合の特異性を詳細に検討する必要がある。 次に、生化学的手法を用いて、分子量77Kdaのレセプター候補細胞膜タンパク質(P77)の同定と単離に成功した。P77は、血球細胞をGBPで刺激すると数分以内にチロシンリン酸化される細胞膜一回貫通型膜タンパク質である。P77 cDNA(ORF:1,686bp)のクローニングの過程で、分子内に一部のDNA鎖欠失が観察される2種の相同遺伝子(ORFがそれぞれ1,368bpと957bp)が同定できた。この3種の遺伝子とも転写レベルでは血球細胞で発現していることを確認し、特に、P77mRNAは血球細胞のうち免疫活性が最も高いプラズマ細胞でのみ発現していることを証明した。P77遺伝子の膜外領域には、IgG様モチーフが存在し、また、細胞内領域にはITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)の存在が明らかになった。したがって、P77自体がGBPレセプターである可能性は十分あり得るため、現在、Cos7細胞やSL2細胞で発現し^<125>I-GBPとの直接結合性を証明すべく実験を続けており、まもなく結論付けられる。
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