研究課題/領域番号 |
14340265
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
綿野 泰行 千葉大学, 理学部, 教授 (70192820)
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研究分担者 |
三中 信宏 農業環境研究所, 地球環境部, 主任研究員
朝川 毅守 千葉大学, 理学部, 助手 (50213682)
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キーワード | Pinus / introgressive hybridization / cytoPlasmic capture / molecular phylogeny / chloroplast DNA / mitochondrial DNA / nuclear DNA |
研究概要 |
マツ属の種間では、浸透性交雑を通じて異種の遺伝子が種の壁を越えて浸透する例が知られている。この交雑による遺伝子浸透は遺伝子の塩基配列に基づく種間の系統関係の推定に大きな影響を及ぼすことが推定される。本研究では、独立遺伝を行う3種類のゲノム(核ゲノム、母性遺伝のミトコンドリア、父性遺伝の葉緑体)全てについてマツ属種間の遺伝子系統樹を作成し、それらの樹形の比較を行い、遺伝子浸透に伴う系統樹のバイアスを検出することを日的とした。 本年度では、昨年と同様、マツ属ストローブス亜属の約20種について新たな核遺伝子を二つ[NAD依存、プラスチド局在型glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GapCp)、テーダマツ由来EST (PtIFG_2009)]を解析し、今までに得た葉緑体DNA系統樹・ミトコンドリアDNA系統樹・核遺伝子(PtIFG_9008)系統樹との比較を行った。 得られた塩基配列を元に最節約法で系統解析を行った結果、PtIFG_2009では一つの種から3つ以上の塩基配列が得られ、一部の分類群での遺伝子重複が示唆されたため、以降の解析には使用しなかった。GapCp系統樹は、ストローブス亜属の2つの節のうち、ストローブス節が単系統となり、パリア節が側系統となる点、そしてアジア産のパリア節であるジェラルディアーナ亜節がストローブス亜節の姉妹群となる点において、葉緑体および核のPtIFG_9008と一致した。 一方、ミトコンドリアの系統樹では、3つのクレードが認識され、そのうち2つにはストローブス節とパリア節ジェラルディアーナ亜節の両方の種が含まれていた。比較した四者のうち、節間の系統関係が異なるのはミトコンドリアだけなので、ミトコンドリア系統樹が遺伝子浸透により歪んでいる事が示唆される。
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