研究概要 |
本年度は,パプアニューギニア低地,ソロモン諸島西部州,パラオ共和国,中国海南島を対象に,人類学における衛星画像分析の応用についての研究を行った.(1)パプアニューギニア低地では地域の人口支持力の重要な決定要因であるサゴ椰子の空間的分布を推定する目的で,ランドサット衛星データによる土地被覆分類を行い,熱赤外線バンドを利用したサゴ椰子林の抽出方法を明らかにした.(2)ソロモン諸島では,過去に撮影された航空写真とイコノス衛星データの比較によって,1990年代におこなわれた択伐による熱帯林商業伐採の環境影響を評価した.その結果,一般的には熱帯林への負荷が少ないと考えられている「択伐」という方法を用いた場合でも,ソロモン諸島において実際には熱帯林が大きく減少したことが明らかになった.(3)パラオ共和国においては,国全体を撮影したランドサット衛星と首都コロールを撮影したクイックバード衛星を利用して,土地利用分類及び植生指標のラスター地図を作製し,2000-2001年に発生したデング熱のアウトブレイクを環境条件との関わりから検討した.その結果,ランドサットのような解像度の低い衛星では居住条件とデング熱感染のリスクを関連づけることが困難である一方で,クイックバード衛星から得られる詳細な居住環境の指標がデング熱の感染リスクを説明する可能性が示唆された.(4)中国・海南島では昨年度に引き続き,イコノス超高解像度衛星の画像分類方法の開発を行った.これは,画像分類方法がランドサットなどの地上解像度が数十メートルの衛星データを前提に発達してきたことに関連して,従来の手法をイコノスなどの超高解像度衛星に適用すると様々な不具合が生じることをふまえたものである.現在,ひとつひとつの分類クラスごとにスペクトラムパタンとその空間的構造を調べるという作業を行い,テクスチャー解析のためのパラメータを決定する基礎情報を整理している段階である.
|