研究概要 |
本年度は,パプアニューギニア低地,ソロモン諸島西部州,パラオ共和国,中国海南島を対象に,村落レベルの人類学調査で蓄積されてきた土地利用/土地被覆およびその決定メカニズムの情報と衛星画像分析の統合的解析をすすめた.海南島では,これまでの分析結果(ランドサットTM, MSS,イコノス)に加えて,高解像度リモートセンシング衛星であるクイックバードのデータを分析し,換金作物の導入が進行する村落周辺において,二次林が換金作物畑に置き換わっていく時間的空間的パタン,単位土地あたりの労働コストの時間的変化が明らかになった.また,人々の植生遷移にかかわる民族植物学的知識に基づいた過去の土地利用分類の復元結果を客観的データで検討し,その方法論を確立した.ソロモン諸島では,択伐による商業伐採が熱帯林に与えた影響,伐採跡地を焼畑としてつかうことによる人々の生活への影響を明らかにした.パプアニューギニア低地では,1970年代から現在にかけて収集されてきた人口支持力の重要な決定要因であるサゴ椰子,焼畑適地の空間的分布データを地理情報システムに統合することによって,その変化を空間的時間的に補間する試みを行った.パラオ共和国においては,すでに完成した土地利用分類及び植生指標のラスター地図をプラットフォームとして,SATSCAN空間統計学を利用することで,デング熱アウトブレイクの空間的時間的検出システムを構築した.本年度の後半には,個々の事例を横断的に検討することで,人類学の詳細な村落データと空間情報科学を統合する方法論の確立につながるようなフレームワークの構築に取り組んだ.
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