研究概要 |
途上国における人口急増により人間-環境系の持続が危機に瀕している現在、人間活動による土地利用・土地被覆への影響を詳細に解明することは緊急の課題である。ランドサットなどの衛星によって記録された地上情報分析を利用した土地利用・土地被覆推定の研究はリモートセンシングと呼ばれる新しい研究領域の重要な一分野として急成長しつつある。しかし、この方法論は都市空間のように詳細な情報が得られる場合や、地球全体の植生変化を把握する場合には成果をあげているものの、地球環境変化に重要な影響を及ぼす発展途上国の農村部における土地利用の変化や環境破壊のモニタリングには、基本的な地上情報の欠如のために十分に応用されていないのが現状である。本研究は、代表者・分担者が人類生態学あるいは生態人類学の視点から途上国の小集団において収集したデータとリモートセンシングデータとを同時に分析することにより、人間活動と土地利用・土地被覆との関連性の分析方法を確立することをめざした。特に,2000年より利用が可能となった超高解像度衛星データをもちいた分析の可能性と限界性を明らかにすることを最大の目的とした.本年度は,これまでに人類学的方法論によって収集したデータと超高解像度衛星データとの複合的分析をこころみてきたパプアニューギニア低地,パプアニューギニア高地,ソロモン諸島西部州,パラオ共和国,中国海南島などにおける研究を総括し,超高解像度衛星を用いた土地利用分析の人類学への貢献,および人類学的データの超高解像度衛星分析における有用性を検討した.具体的には、人類学者による土地利用分析に衛星画像を利用することの有用性と限界性を考慮したうえで,分析のために現地で収集すべきデータの項目と数を,地域生態系の植生構造あるいは土地利用パタンなどの違いによる影響も考慮しながら整理した.これと並行して,それぞれの地域における個別の研究成果についての学術論文を執筆するとともに,人類学と空間情報科学を統合するフレームワークについての出版物を準備中である.
|