研究課題/領域番号 |
14350001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武藤 俊一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00114900)
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研究分担者 |
白峰 賢一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10241358)
戸田 泰則 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00313106)
足立 智 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10221722)
竹内 淳 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (80298140)
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キーワード | 量子ドット / 電子スピン / 量子演算 / 光スイッチ / 円偏光 / 時間分解発光 / 励起子 / スピン緩和 |
研究概要 |
半導体の電子スピンを位相を破壊せずに、いわゆるコヒーレント制御できれば量子コンピューティング或いはキャリア蓄積のない超高速光スイッチなど様々な応用の可能性が拓ける。特に、量子ドットではスピンのコヒーレンス時間が長い可能性がある。本研究ではInAs/GaAs系量子ドットの電子スピンを光学的にコヒーレントに制御することを実験的に検討する。これにより電子スピンのコヒーレンス持続時間の実測、位相破壊要因の解明、及びコヒーレンス向上のための改良を行う。 本年度は15層積層したInAlAs/AlGaAs量子ドットを試作、非共鳴励起下でのスピン緩和測定を試みた。実験は発振波長780nm、パルス幅80fsのチタンサファイアレーザーを励起パルス光源とし、右回り円偏光(σ_+)パルスで試料を励起し、その発光のσ_+成分と左回り円偏光(σ_-)成分を分けてストリークスコープを用いて時間分解発光測定した。分光器の入射スリット手前に1/4波長板と偏光子を置き、発光を一度直線偏光に変換し、偏光子により水平および垂直直線偏光発光成分を分けて測定することで発光の偏光を識別した。試料は、10Kに冷却した。励起エネルギーと検出エネルギーとの差はおよそ100meVである。直線偏光励起での時間変化は単一指数関数で良くフィッテイングでき、励起子の寿命(再結合時間)は約1.18nsと見積ることができた。σ_+成分とσ_-成分との差の減衰はスピン緩和時間をτ_sとするとexp(-2t/τ_s)で与えられる。これから得られたスピン緩和時間τ_sは1.31nsとなり励起子再結合時間と同程度となることが分かった。2次元量子井戸に比べて非常に長いスピン緩和時間となっており、井戸で有効なスピン緩和機構が量子ドットでは消失したと解釈できる。量子ドットが電子スピンのコヒーレント制御に好適な材料であることが確認できた。
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