IV族系のフラクタル構造半導体格子を作製のために、SiGe系有機金属気相成長(MOVPE)法及びSi/SiO_2系有機金属分子線エピタキシー法の開発を進めている。今後高速通信分野で開発が急がれているSiGe系結晶成長に量産性の優れたMOVPE法を提案し、この方法において初めてGeドット、SiGe薄膜及びSiGe/Si超格子の作製に成功した。しかしフラクタルは数列で記述される非周期構造のため、格子配列の制御パターンのステップ数が大幅に増大しプログラミングが繁雑になり、フラクタル構造半導体格子作製では市販されている結晶成長装置に組み込まれているバルブ・シーケンサーでは対応できない。本研究ではこれらの問題を解決するため独自にコンピュータ・シーケンサーを構築した。このシステムではフラクタル構造を特徴付けるフラクタル次元を入力することによりガス供給シーケンスのもとになる数列パターンを発生し、それをもとにガス供給バルブを直接制御することを可能にした。このシステムをSiGe系MOVPE装置に導入しSiGe/Si超格子のMOVPE成長を行った。 さらに多孔質シリコン(PS)形成方法である陽極化成過程に発現するフラクタル性に着目し、特にその電子状態制御が可能となるサイズを持つナノ多孔質シリコン(nano-PS)の作製、制御技術を開発した。この方法は結晶成長を利用した人工的なプロセスとは異なり、自然現象の持つフラクタル性を制御しようとする方法である。そのため作製したnano-PSのフラクタル次元の評価が重要になる。現在、nano-PSの走査電子顕微鏡による構造評価とその画像解析によるのフラクタル次元の同定について検討を進めている。
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