新機能材料創製を目指し、IV族系フラクタル構造半導体の作製法ならびにその電子状態評価と制御について研究を行なっている。フラクタル構造は自己相似性を持つ非周期構造である。これまで、(1)結晶成長の精密制御による人工フラクタル、(2)自己組織化を利用した自然フラクタルについてその可能性を調べてきた。両者ともフラクタル構造を特徴付けるフラクタル次元をパラメータとして導入し、フラクタル構造の作製・評価を行なっている。 (1)人工フラクタルについては、フラクタル数列発生プログラムとシーケンサー・プログラムを有するコンピュータを結晶成長装置に導入することにより、任意のフラクタル次元を入力すると、ガス供給シーケンスのもとになる数列パターンを発生し、それをもとにガス供給バルブを直接制御することを可能にした。結晶系及び成長法としては成長制御性を考慮して、SiGeC系MOVPEの開発をすすめている。有機Ge材料の検討を行い、テトラエチル・ゲルマニウム(TEGe)利用することにより、SiGeC/Si超格子構造が可能となった。 (2)自然フラクタルについては、自己形成される複雑な構造に対して画像処理におけるボックス・カウンティング法を適用することにより、そのフラクタル性を特徴付けるフラクタル次元の評価法を考案した。現在、自己形成により得られるナノ構造ポーラスシリコンやナノ・ダイヤモンドについて、フラクタル次元をパラメータとしたバンド構造(準安定コヒーレンス・局在状態)や誘電率変化についてエレクトロ・リフレクタンス及びインピーダンス測定による評価を進めている。またSi系結晶の自己形成を調べている途中で新たに、優れた発光特性を示す自己組織化ErSiO超格子半導体が発見された。この材料は、現在シリコン・ナノフォトニクスの分野で注目されている(2005MRS(アメリカ材料科学会)Fall Meeting招待講演)。
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