元素置換や酸素処理の履歴、出発組成などによる溶融バルク高温超伝導体の臨界電流密度(J_c)や捕捉磁場などの変化を系統的に調べた。最初にDy系の出発組成を最適化し、これにCeO_2を添加したところ、融液の染み出し量が減少して捕捉磁場が10%以上上昇した。さらにZnOの微量添加を行った結果、77KでのJ_cが3T以下の広い範囲で増大し、捕捉磁場も20%上昇した。試料径、CeO_2の有無などによらず、ZnOを0.025wt%程度添加したときにJ_cと捕捉磁場が最も高かった。次にSm系にZnOを添加したところ、捕捉磁場が1.5倍に上昇した。特にSm211相が欠乏する種結晶直下領域でもZp置換によるピン止め中心が形成されてみが向上し、捕捉磁場の増大をもたらすことがわかった。さらにNd-Eu-Gdの3元系の直径30mm以上の単結晶粒試料の育成に始めて成功した。211相のGdの比が低いほど液体窒素堤度での捕捉磁場が高いが、Gd含有量が高いと材料強度が上がり、低温で割れずに捕捉できる磁束密度が高いことがわかった。さらに、Sm-Eu-Gdの3元系でもGdの211相の割合が50%のときに、液体窒素温度での捕捉磁場が高かった。一方、溶融バルク体の酸素の拡散係数は単結晶と多結晶体の中間程度であり、銀添加により組織が繊密化すると低くなることを明らかにした。Sm系やはJ_cと捕捉磁場が高い試料を得るには低温での酸素アニールが重要であった。しかし、低温では酸素の拡散が遅いため、10気圧の高圧酸素アニールの効果を調べた。その結果に基づき、2段階処理法を考案し、その有効性を確認した。まだ、微細な組織を有すると報告されたY_2Ba_4CuZrO_yをSm系試料に添加したところ、種直下領域で欠乏するSm211相を補うピン止め中心が形成され、1mol%程度の微量添加磁場が向上することがわかった。
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