研究概要 |
(1)負イオン注入による神経細胞接着のパターン化と神経回路網形成 ガラス基板上の薄膜高分子材料(ポリスチレンPS、シリコーンゴムSR,ポリイミドPI)に炭素負イオンを微細なマスクパターン(幅:50μm)を介してラット由来の神経細胞PC-12hの接着特性を調べた結果、ポリスチレンPSとシリコーンゴムSRでは10keV以上,3x10^<15>ions/cm^2以上の注入条件で処理領域への選択細胞接着が得られた。ポリイミドPIでは10keV以上で1x10^<15>ions/cm^2以上で選択的非接着特性が得られ、5keVという低エネルギーでは注入領域への神経細胞の選択接着が観測された。 (2)負イオン注入による高分子表面の親疎水性やタンパク吸着性の制御 負イオン注入処理した各種高分子材料(PS,シリコーンゴムSR, PI)の接触角を気泡法により測定した結果、注入処理表面の水の接触角は浸水など環境により次第に変化することが判明した。しかし浸水後24時間で飽和傾向を示した。これより、乾環境での水滴法よりも湿潤環境で測定する気泡法が親疎水性評価には適していることが判明した。また、負イオン注入処理でPS, SRは接触角が低下(PSで約10°、SRで約20°)し親水化するが、PIは接触角が増大し(約15°)疎水化することが判明した。負イオン注入処理表面のタンパク質吸着性を光電子分光分析法で評価した結果、SR表面では成長因子FGFやNGFおよびゼラチン選択的吸着が確認された。つまり、炭素負イオン注入処理表面はタンパク吸着が選択的に生じ、細胞接着や神経突起伸展が促進された。 (3)パターン化接着神経細胞への電極パッドからの外部電気パルス刺激に対する応答反応: 容量性電極パッドを用いた外部電気パルス刺激下で神経突起伸展の分化過程を調べた結果、正パルス印加電極方向への優先的神経突起伸展を示した。これより、人為的神経回路の神経細胞接続形態を人為的に操作できる可能性を得た。また、外部電気パルス刺激による神経細胞の興奮誘起を微小ガラス電極により測定した結果、外部刺激に対して神経細胞は興奮することが判明し、バイオインターフェイスの入力として利用できることが実証された。
|