研究概要 |
最少ビーム径が5nmに達している集束イオンビーム技術は、エッチング、デポジション、ドーピングの多機能プロセスを実現する実用的なナノテクノロジーである。現在、デバイス故障解析、TEMの試料作製、量子デバイス、光デバイス等の不可欠な作製ツールとして広く用いられている。さらに、集束イオンビームを用いた立体ナノ構造形成技術は、三次元ナノテクノロジーとして期待される技術である。本技術は、以下の特徴を有する。1)集束イオンビームが5nm程度まで集束可能であるので、3次元CADデータを用いて、数10nmレベルの立体ナノ構造形成が可能である。2)ソースガスを変えることにより、金属、半導体、絶縁体等、多種の材料で、三次元ナノ構造形成が可能である。 以下の課題に対する研究成果を得た。 (1)FIB-CVDによるピラーを用いた多種ヤング率測定:C,W,Fe,SiO_2系ソースガスを用いて、ピラー作製を行い、共振法により、それぞれのヤング率測定を行った。さらにCとWに対しては、混合系についてもヤング率の測定を行った。これらのデータはFIB-CVDによるナノメカニカルシステム設計に有用である。 (2)FIB-CVDを用いたナノ電磁石の作製:Feガスソースにより、ナノ電磁石を作製し、その動作を確認した。,この成果は、微少磁性計測等に応用展開される。 (3)FIB-CVDを用いた細胞操作のための細胞切断ツールおよびナノネットの開発:植物細胞壁は硬いが、切断ツールを作製して、実際に細胞壁切断に成功した。さらにナノネットを試作し、水中にある直径2μmのプラスチック球の捕獲実験に成功した。 (4)モルフォ蝶りん粉構造の作製と光学特性評価:モルフォ蝶の疑似りん粉構造をFIB-CVDにより、3Dデータをもとに作製する事に成功した。分光測定により、モルフォ蝶と同じ、ブールー発光の観測に成功した。 FIB-CVDを用いた、任意形状の微小な立体ナノ構造形成技術が、エレクトロニクスからバイオテクノロジーまで広い範囲にわたるナノテクノロジーの中核技術の一つとして今後さらに発展する事が期待される。
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