固体表面における水素の挙動と表面反応に及ぼす効果が注目されている。固体中の水素の拡散現象については伝統的な手法でいろいろな材料にたいして多くの研究者が調べている。しかし、表面における水素の検知手段が無かったために表面における水素の挙動に関する研究は数が少なく、未解決の問題も多い。筆者らの研究により、電子励起イオン脱離法を利用した飛行時間型の検出法(TOF-ESD)は電子ビームを細く絞りパルスにすることで、水素顕微鏡として空間分解能が1μmをきるところまで発達してきた。これを用いるとこのサイズの分解能で水素の表面での拡散現象が捉えられことから本研究テーマが提案された。水素は固体表面上を室温で動き回るので、試料台を低温にする必要がある。このための装置設計製作に時間がかかり十分な成果は得られなかった。試料温度-60℃〜100℃までの間のシリコン表面やアルミニューム薄膜に対する拡散の様子と、高温におけるポーラスシリコンと窒化シリコン上の水素や酸素の拡散が十分に捕らえられている。 また水素顕微鏡の改良の過程で、新しい概念によるX線顕微鏡を開発し、空間分解能が100nmを切ることが判った。新しいX線顕微鏡は入射エネルギー1keV前後ときわめて低いエネルギーで目下は300eV程度までさえることができてイメージをとることができる。しかし、このような低エネルギー領域のX線のエネルギー分光は大変困難で今後の研究開発が待たれる。しかし、今後の発展によっては、生体試料などへの応用が考えられ期待される。
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