研究概要 |
1.GaAsアンチフェイズ境界の微視的評価 カスケードデバイス作製の大前提となる高効率波長変換デバイスの実現には伝搬ロスの低減が必須であることが,前年度までの研究であきらかとなった。現状の伝搬ロスの大部分は導波層界面の段差によるものと考えられるが,これ以外にも,反転層と非反転層の境界(アンチフェイズ境界)の影響が懸念される。そこで,GaAs周期反転構造におけるアンチフェイズ境界の微視的な幾何学構造と電子構造をあきらかとするために超高圧電子顕微鏡観察とカソードルミネッセンス測定をおこなった。その結果,最適化されていない成長条件で作成されたGaAsアンチフェイズ境界は結晶性が劣化しており,非発光性再結合中心の集中した劣悪なものとなっていることがあきらかとなった。現在,最適条件下で作製したより良質と考えられるGaAsアンチフェイズ境界について同様の評価を進めている。 2.GaNの非線形光学定数の精密評価 1.3μm帯や0.8μm帯などで動作するカスケード非線形光学デバイスを実現するためには,ワイドギャップ半導体を用いる必要がある。近年急速な進歩を示している窒化物半導体は比較的高い非線形性を有するとされ,有望な材料系であるといえる。しかし,その非線形光学手ウィ数の測定は信頼性が低く,実用的な非線形光学デバイスを実現するためには,その特性の精密な再評価が不可欠である。そこで,サファイアc面基板上にMBE成長したGaN薄膜について,その非線形光学定数の精密測定をおこなった。新たに透過型メーカーフリンジ測定系を立ち上げ,薄膜資料内での多重反射効果を考慮して正確な測定,解析をおこなった。得られた結果は,従来値の半分程度の大きさとなった。従来の報告がすべて多重反射効果を考慮していなかったことがその原因の一つと考えられる。今後,MOVPE成長GaNについても同様の測定をおこなう予定である。
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