近接場光を使った「ナノ光集積回路」を次世代の光システムのための基盤技術として機能させる観点から、次の2課題を並行して行った。 【1】ナノ光集積回路内部の近接場光エネルギーの伝送機構解明:標準試料として、CuCl量子ドットを用い、パルスレーザー光を照射して近接場光を発生させ、大きさ比が1:√2:2である近接する3つの量子ドット間の近接場光エネルギー移動を使って、ナノ光スイッチの動作を確認した。特に制御信号を印加した瞬間の出力信号の立ち上がり、発ち下がり時間が各々50〜90ps、1〜2nsと評価した。このデバイスの性能指数が既存の光デバイスより10〜100倍高いことを確認した。光システムのナノ物質材料としてZnOを、我々の見出した非断熱過程を利用した近接場光による化学気相堆積法により高い位置寸法精度で作製した。すなわちZnについては寸法5nmの微粒子作製に成功しこれを酸化させた。さらに、隣り合うZnO微粒子間での近接場光エネルギー移動を確認した。 【2】外部回路との結合:くさび状シリコン基板の上に金細線を形成し、幅150nmのプラズモン導波路を製作し、TMプラズモンを導波路に伝送させた。伝搬長さは3ミクロン以上であり、当初の目的を満たした。性能を向上させるために更に損失の小さな形状として金属微粒子列により導波路を形成し、伝送損失を1/10に低減した。さらに金属微粒子配列による集光器を作製し、前記の金属微粒子列入力端にプラズモンを結合させた。導波路の並列アレイ作製の可能性を探るために、上記金属微粒子配列をジグザグ形状とし、伝送特性を評価し、直線状配列と同等の低い伝送損失を確認した。 以上の【1】、【2】の研究成果により次世代光システム内でのナノ光集積回路の使用可能性を確認した。
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