シリコン原子のレーザー冷却技術の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350037
• 研究機関: 特殊法人理化学研究所
• 研究代表者: 熊谷 寛 理化学研究所, レーザー物理工学研究室, 先任研究員 (00211889)
• キーワード: レーザー冷却 / シリコン / 深紫外コヒーレント光源 / 波長変換 / 原子分光

研究概要

研究代表者は本課題において、シリコンテクノロジーの革新を目指して、シリコン原子のレーザー冷却技術を世界に先駆けて開発することを目的としている。シリコン原子のレーザー冷却技術の開発は、シリコン原子の運動制御、原子波の波束制御を実現し、新たにシリコン原子リソグラフィー技術、シリコン原子ホログラフィー技術、シリコンアイソトープデザイン技術の技術開発につながると期待できるためである。
平成14年度はまず深紫外コヒーレント光源周波数の冷却周波数への固定技術の開発を目指した。具体的には、シリコンを陰極電極材料としたホローカソード放電管を用い、光ガルバノ効果による放電電流の微小変化を検出して、シリコン原子の分光を行った。冷却波長付近の250nm 252nmで、4本の共鳴線を観測するとともに冷却周波数およびその周辺の周波数構造を調べた。この4本のシリコンの共鳴線スペクトル以外に、陰極材料に含まれているチタン、アルミニウムの共鳴線も見られたが、光源の線幅で十分分解できることが判明した。また同スペクトルの放電電流依存性や、入射レーザー光強度依存性も詳細に調べた。
コヒーレント光源周波数の周波数可変技術の開発に関し、和周波発生のための2重共振器中のBBO結晶の温度を変えることにより、共振する780nm光の光周波数を変化させ、発生する和周波の光周波数を可変にできることを提案した。さらにコヒーレント光源の第1段階目では50%を超える波長変換技術を確立し、コヒーレント光源全体の性能を大幅に向上させた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Asakawa, H.Kumagai, K.Miforikawa, M.Obara: "50% frequency-doubling efficiency of 1.2-W cw Ti : sapphire laser at 746nm"Opt.Commun. Vol.216 No.1-6(In press). 311-315 (2003)
• [文献書誌] H.Kumagai, Y.Asakawa, T.Iwane, K.Miforikawa, M.Obara: "Efficient frequency doubling of 1-W CW Ti : sapphire laser with a robust high-finesse external cavity"Appl.Opt.. Vol.42 No.6(In press). (2003)
• [文献書誌] H.Kumagai, Y.Asakawa, K.Miforikawa, M.Obara: "Towards laser cooling of silicon atoms"Proceedings of International Symposium on Manipulation of Atoms and Molecules by Electronic Excitations. 114-115 (2002)
• [文献書誌] H.Kumagai, K.Miforikawa, Y.Asakawa, M.Obara: "Towards nano-process applications with laser-cooled silicon atoms"Proc.SPIE. Vol.4830(In press). 218-221 (2003)
• [文献書誌] H.Kumagai: "All-solid-state, continuous-wave, single-frequency, tunable, deep-ultraviolet coherent light source by efficient sum frequency generation with dual frequency enhancement"2002 IEEE/LEOS Annual Meeting Conference Proceedings. Vol.2. 436-437 (2002)
• [文献書誌] H.Kumagai, K.Miforikawa, Y.Asakawa, M.Obara: "Towards nano-process applications with laser-cooled silicon atoms"RIKEN Rev.. No.50(In press). 34-37 (2003)
• [文献書誌] H.Kumagai, et al.: "Frequency Standards and Metrology"World Scientific, New Jersey. 552-554 (2002)