シリコン原子をレーザー冷却するための、周波数固定技術を開発するために、まずスペクトル幅0.1nm程度のナノ秒チタンサファイヤレーザーの第3高調波を用いて、広帯域に光ガルバノ分光実験を行った。その結果、レーザー冷却遷移と同様の3重項状態間の遷移の、6本のうち4本が観測できた。次に共振器内部にエタロンを内蔵したナノ秒チタンサファイヤレーザーの第3高調波による、レーザー冷却波長での光ガルバノ分光実験を行い、スペクトル幅が数GHzで、シリコンのドップラー広がりと同程度のレーザー線幅を観測した。さらに研究代表者が開発したCW単一周波数深紫外コヒーレント光源を用いて光ガルバノ分光を行い、シリコン原子(質量数28)から周波数シフトした位置に、同位体シリコン原子(質量数29)のスペクトルを初めて観測した。 また、研究代表者が開発したCW単一周波数深紫外コヒーレント光源において、その周波数制御を簡便にできる手法を発案した。具体的には、373nm光源の周波数は固定し、その単一周波数により、第2段目の共振器の共振器長を固定した。そのときの373nm光源の周波数の安定度は、極めて高い。それから和周波発生用のBBOの温度を上昇させる。そのとき、共振器は373nm光が共振するように、共振器長が僅かに変化することになる。そしてもう一方の入射レーザーである780nm光はその共振器で同時共振できるように周波数を変化させることになる。結果的に780nm光の周波数が変化することにより、252nm光の周波数が2MHz/0.1℃で微調できることを実証した。同手法は大変安定的に周波数制御でき、シリコン原子をレーザー冷却させるのに極めて有効である。以上総じて、シリコン原子のレーザー冷却に欠くことのできない重要な技術開発を行った。
|